【源氏物語】第三帖 「空蝉」のあらすじを分かりやすく紹介

この記事は約4分で読めます。

第二帖「帚木」で登場した中流女性の空蝉。
頑なに拒まれても思いをあきらめきれない源氏の強引な姿と心の奥底に源氏への思いを秘めた空蝉の切ない思いが描かれます。
また、彼女が「空蝉」と呼ばれる所以もこの帖を読めば分かります。

源氏物語 巻名一覧へ戻る

スポンサーリンク
スポンサーリンク

源氏が覗き見た二人の女性

源氏は空蝉の頑なに自分を拒む態度に、これ以上言い寄っては恥の上塗りだと、心の中では空蝉を想いつつも手紙を送らなくなる。
源氏からの連絡が途絶えると、空蝉は悲しい思いを感じながらも、夫もいる身である自分が源氏との秘め事を続けるわけにはいかないと、このまま関係を断ってしまうのがよいと考える。

しかし、空蝉への想いをあきらめることがどうしてもできない源氏は、彼女の弟である子君の案内で再び空蝉の元へとやってくる。
子君が姉の元へ源氏を案内するチャンスを伺おうと、一人で空蝉や女房達のいる部屋へ入っていった隙に、源氏は子君が開けっぱなしにしていった格子から中の様子を覗き見する。
そこには空蝉と空蝉の義理の娘にあたる女が碁を打っていた。

灯の元で空蝉の姿を初めて見る源氏。
彼女の姿は華奢で瞼が少し腫れぼったく、艶やかさもあまりない。
どちらかと言えば器量はよくないように思われたが、その欠点をうまく隠すような嗜み深さを兼ね備えた女性だった。
一方、空蝉の向かいに座る娘は、陽気にはしゃぐ姿が少々品が足りないような印象を覚えたが、色が白く、目元や口元に愛嬌があふれた、華やかな色っぽさをもつ女性であった。
浮気っぽい源氏の性分は、空蝉への想いとは別に、娘のことも気になり、見過ごせずにいるのであった。

源氏の手に残った女の抜け殻

女たちの碁が終わると、部屋にいた人たちも散り散りに寝静まった様子である。
源氏はいよいよ、子君の案内で、空蝉の寝所まで忍びこむ。

空蝉は源氏からの連絡が途絶えてから、源氏が諦めてくれたことをよかったと思おうとしながらも、心の奥底では夢のような一夜のことを忘れられず、安らかに眠れずにいた。
そんな彼女の横には無邪気な娘もぐっすりと眠っている。

眠れぬ夜を過ごす空蝉は、誰かが寝所に近づく気配を感じ取る。
そして、その正体が源氏であると芳しい香の匂いですぐに気づいた。
彼女は慌てて寝所から滑り出し、薄い肌着だけでその場を立ち去る。

空蝉が立ち去ったことに気づかない源氏は彼女がいるはずの部屋に一人で寝ている人物を空蝉だと思い添い寝をする。
女の様子から、間違いには気づいたものの、慌てふためくのもみっともないと思い、また、昼間に覗き見た娘であれば悪くもないとそのまま契る。

去り際に源氏は、空蝉が脱ぎすべらせていった蝉の抜け殻のような薄絹の小袿こうちぎを手に取り持ち帰る。
そして、その薄絹を常に側に置き空蝉の残り香を感じては彼女を懐かしむのであった。
一方空蝉は、平静さを装いつつも、源氏への自分の想いが思いのほか深くなっていることに気づく。
夫のいない娘の頃だったらよかったのにと源氏への切ない思いと夫への罪の意識に心を悩ませるのであった。

【感想】正反対の二人から感じる源氏物語の魅力

この帖では、源氏が覗き見た二人の女性が登場します。
ここでは、この二人の女性の容姿や性格が映像として頭の中で想像できるぐらいに、丁寧に表現されていることに注目したいと思います。
まずは二人の特徴をおさらいです。

空蝉は小柄で痩せており、決して器量が良いとは言えません。
しかし、静かに落ち着いていて、嗜みが深そうな様子には心が惹きつけられるものがあります。
所謂、内面の美しさが滲み出た静かな女性であることが想像できます。

一方の娘は大柄で豊満、目や口元には愛嬌があふれた美しい女性です。
ですが、まだ大人になりきれていないからなのか(年齢は空蝉と同じくらいですが)、陽気にはしゃいでいる姿は品に欠けるところがあります。
見た目が華やかな女性であり、性格も活発な女性です。

どうでしょうか。
身長や肉付きといった体格、容姿、そして彼女たちから滲み出る性格と雰囲気。
どれをとっても正反対です。

二人の特徴を細やかに表現してあるからこそ、正反対の二人が仲良く碁を打っている姿をまるで実際に目の前にしているかのように感じることができます。
そして二人が真逆であればあるほどこのシーンは深みを増すように思います。

筆者はこの帖を読んで紫式部が丁寧に描く登場人物たちに魅力を感じ、その後の物語にはどのような人たちが現れるのだろうかと楽しみに思うようになりました。
まだまだ序盤の第三帖でがっつり心をつかんでくる紫式部。恐るべしです。

源氏物語 巻名一覧へ戻る

コメント

タイトルとURLをコピーしました